MONEYKitトップ > from MONEYKit > スペシャルインタビュー > 社長対談 末永徹氏×石井茂
実査 −ある「ルール」のはじまり
- 末永
- そういう意味では、エンロンは、率直に言って僕はびっくりしました。たぶん、多くの人にとって意外だったと思うんですよ。石井社長も、アメリカでは粉飾決算はできないと思われていませんでしたか?
- 石井
- できにくいとは思ってました。できにくいとは思っていたけれども、一方で、アメリカって日本以上にコネ社会じゃないですか。だから、そこは建前と本音みたいなのがアメリカにもあって、あるルールを設けるとそれに対して最高度に最適化をきかせるっていうところがあるというふうに思っているんで、ありうるかなと。それがあるんでアメリカってシステムでそれを必ず予防していると思っていたので、それが働かなかったのは意外でしたけれどね。
- 末永
- アメリカの会社があのような形でつぶれるっていうのは、意外でした。
- 石井
- アメリカで「実査」がそもそも問題となったマッケソン・ロビンス事件(※)と呼ばれる有名な例があって、それは何かって言うと、イギリスの会社がニューヨークの薬品の卸売会社で12年間売上はすごい順調に推移し、上場もしていた。ところが、販売先の一つにカナダの子会社があって、その売上が全部嘘だって分かったんです。そこで、株主の訴訟があった。要するにみんな適正だと思っていたのに嘘だったと。それが問題になってルールが変わって、会計監査では必ず実査しろとなりました。アメリカって「ルールの範囲内では何でもやっていい」っていうところがありますね。最適化するっていうのが。・・・・エンロンほどできるっていうのは意外ですけれどもね。
- 末永
- これは比較のしようがないですけれど、エンロンが危機に陥ってから破綻するまでの速度は非常に速いですね。
- 石井
- 速いですね。
- 末永
- それが日本との違い・・・・というか、アメリカ独特なんですよね。アメリカ以外の国ではどこもあんな風に行かないと思うんですよ。僕達は日本にいるから、日本とアメリカは違うという見方をするけれども、アメリカが特殊で、あれがゆえに、アメリカの経済って強いんだと思います。
一見矛盾する中でどうやってバランスをとっていくか
- 末永
- 会社の経営っていうのは、ある種の使命感というかおめでたさとか、そういうものが無いとできないっていう気がするんですが、それはどうですか。
- 石井
- さっき言ったように、目先の損と長期的な利益ってあるじゃないですか。一見すると矛盾するんですよね。その中でどうやってバランスをとっていくかっていうことかなと思いますね。その軸ですね。
- 末永
- 長期的なことでいえば、使命ですよね。そういうある種のファナティックなところがないと企業の経営はできないのかなと。
- 石井
- そういうのは必要な気がしますよ。証明できないんですよ、やっている最中は。でも、何年かたった後に証明されるかもしれないと思うんですね。それは支えるものは何かっていうと、「これは正しい」とか・・・
- 末永
- ファナティックですよね(笑)。
- 石井
- それはそう思いますね。それがないと自分を支え、立ちきれない。
- 末永
- ましてや自分ひとりだったらいいけれども、大勢の人間を引っ張っていかなければならないとなると。
- 石井
- でも、そういう視点を持てるというところが、経営するということだと思うんですけれども。
- 末永
- まさにおっしゃるとおりですね。ソニー銀行の預金残高が増えることが世の中のためだと思えないとソニー銀行の経営はやれない。あまり合理的ではないけれども(笑)、そういう風に信じられないとやっていけないですよね、きっと。
- 石井
- 合理的だと思っているんですけど、実は(笑)。
いろいろ理由はつけられますが、単純に「選択肢を示す」というのはいいことだと思っているんです。物事の発展という意味でね。一つしかないっていうのは発達していないということじゃないですか。それは、自然界を見ても、発達するとその種が増えるんですよ。
- 末永
- たしかに、合理的です(笑)。だから、僕も、応援する本を書いたのでした。
※マッケソン・ロビンス事件
1938年、アメリカで起きた有名な粉飾決算事件。棚卸資産と売掛金の架空計上、経営陣による不正があったにもかかわらず、監査法人は12年間にわたって無限定適正意見を付していた。この事件の発覚をきっかけに企業会計および会計監査に対する批判が高まり、現在、確認の実施と棚卸資産の棚卸の立会いは重要な監査手続きの一つとなっている。
- 社長対談 末永徹氏×石井茂(1)
- 社長対談 末永徹氏×石井茂(2)
- 社長対談 末永徹氏×石井茂(3)
- 社長対談 末永徹氏×石井茂(4)
- 社長対談 末永徹氏×石井茂(5)
- 社長対談 末永徹氏×石井茂(6)

